メンタルヘルス・心理学
2011年11月07日

人間には、時間を感じるために心がある

 

先日、大学時代の友人が亡くなりました。まだ54歳の若さです。中国行

の飛行機の中で急に胸に痛みを訴え、緊急着陸し、病院に搬送されましたが

そのまま帰らぬ人となりました。

 大学時代は、慌てず騒がず、のほほんとしていた彼、大学卒業後、大学

時代に知り合った彼女と結婚、奥さんの実家の家業を継ぎ、奈良の本店に

加え、大阪、京都、札幌、新潟に支店を出し、さらにネットショップも立

ち上げ、会社を大きくしたい、家族従業員の生活を守るんだと本当に忙し

く働いていた様子でした。ここ18年間で50回以上も中国に出かけ、生産

・仕入れの交渉にあたっていたようです。

 大学時代にスキーツアーで知り合った二人、その出会いから知っている私

は、通夜、葬儀、火葬場まで共にしながら、今も彼の死の意味を問い続けて

います。

 「忙」という字は、心(こころ)を亡(なくす)と書きます。確かに、あ

まり忙し過ぎると、心に余裕が無くなってきます。

 彼の死因は、中国では特定されることはありませんでしたが、おそらく

心筋梗塞ではないかと私は思います。たぶん前兆はあったと思いますが、

忙しさのあまり気がつかなかったり、多少異変を感じつつも、まだまだ大丈夫

という考えの方が強かったと思います。もし心に余裕があったら、病院に検査

に行っていたかもしれません。

 改めて、人間にとって本当の豊かな生活とは何だろうと考えさせられます。

 ドイツの作家、ミッシェル・エンデの代表作「モモ」。平和な町にある日

やって来た時間どろぼう。「時間を貯蓄することで利子が付き、やがて大資

本が得られる」と言葉巧みに町の人をだまし、歌ったり、おしゃべりしたり、

お酒を飲んだりする楽しみの時間を捨て、ただ働くだけの生活に追い込まれた

人々は、次第に笑顔を失い、怒りっぽくなってしまった。

 人の話を聞くのが得意だった13歳の浮浪児「モモ」は、人間の一人一人

には、その人の分として定められた時間があり、それを分配するのが仕事だと

いう、この世の時間をつかさどる神のような人物と出会う。

 モモはその神に「時間どろぼうから、人々を守ってやって欲しい」と願うが、

神は、「それはできない。人間は自分の時間をどうするかを、自分で決めなく

てはならないんだ。」と、さらに「光を見るために目があり、音を聞くために

耳があるように、人間には、時間を感じるために心があるのだ」だから、

「もし、その心が時間を感じられなくなれば、その時間はないも同じだ」と

答えている。

 「モモ」が出版されたのが1970年代半ば、日本は高度成長期の終盤で、

世界一の長時間労働大国と言われ、過労死という言葉も生まれた時代。それ

から35年以上が経過し、労働時間はかなり短縮されてきたが、今我々に問

われているのは、「自分の時間をどう生かして使うか」ではないでしょうか。

 亡くなった友人の奥さんは、50歳を超え、「そろそろゆっくりした時間を

作ろうよ。1~2年ゆっくりして、また働いて、そしてまた休んで行こうよ」

と提案し温泉旅行を始めた矢先の出来事で、非常に悔やまれています。

 やりたいことは、やりたいときにやっておかなければならない。後で後でと

先送りしてはならない。そんな教訓を彼から与えられたように思います。自分

の時間を大切にしていきたいですね。

 

日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー 八濱 雅彦

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